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洛中洛外図・舟木本を読む

2,200円(税込)
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発売日2015年11月20日
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  • ISBN コード : 9784047035645
  • サイズ :四六判    総ページ数: 272
  • 商品寸法(横/縦/束幅): 127 × 190 × 16.0 mm
  • ※総ページ数、商品寸法は実際と異なる場合があります

ひときわ目立つ若松図の空間はなにを表すか? 絵画史料論の極致を展開!

数多い洛中洛外図のなかでも、国宝の上杉本、重要文化財の歴博甲本と並んで三大洛中洛外図屏風と称される東京国立博物館所蔵の舟木本。ほかの洛中洛外図と異なる大きな特徴は、岩佐又兵衛筆の躍動感溢れる人物群が織りなす絢爛豪華な画面構成である。ところがこの屏風は長い間又兵衛の作品とはされてこなかった。この魅力ある近世初期風俗画をあくまで又兵衛の作と考える筆者は、ではこれがいつ、誰の注文により、制作されたかを、もっぱら屏風に描かれた表現や事柄を精査・検証し、歴史史料と突き合わせる絵画史料論の手法によって、さまざまな謎を解き明かすことで、核心に迫っていく。

たとえば、その手がかりとして、描かれた六条柳町遊里の紺暖簾、方広寺豊国定舞台の能の演目、猪熊事件を思わせる若公家と上臈の姿、武家行列に視線を送る「かぶき者」の公家、二条城内での京都所司代板倉勝重の裁判、特徴的に描かれた9か所の若松図の空間、ひときわ目立つある人物表現の特異な筆致などの細部から読解を試みる。

筆者はこの屏風が描く光景は慶長19年6月〜9月、方広寺梵鐘の鋳造以降のこととする。それは豊国定舞台で演じられている能の演目は従来「松風」とされてきたが、じつは「烏帽子折」であり、『梵舜日記』の演能記録8月19日と一致することであるとか、画面中央を貫く京都の二条通の大名行列は京都所司代板倉勝重の三男重昌であり、二条城そばの所司代役所での行事記録によって7月のことと裏付けられることなどによる。当時有名であった官女密通事件を思わせる画像、五条大橋の上で踊る老婆は豊国社の桜を持つおね、右左隻のあちこちにみえる「宝」「光」の文字、ほかの洛中洛外図には描かれたことのない9か所にもおよぶ「若松」図に囲まれた空間、六条三筋町の遊里・享楽空間との親和性と注文主とのかかわりなど、画面に描かれた多くの謎解きから慶長19年のものとして記憶される京都の時空間を歴史事実と重ね合わせて描き出す。

絵画の細部にまで注視し、史料による裏付けを行う著者ならではの、確信に満ちた初めての舟木本読解。

著訳者プロフィール

●黒田 日出男:1943年生まれ。東京大学名誉教授・群馬県立歴史博物館名誉館長。文学博士。著書に『江戸図屏風の謎を解く』『源頼朝の真像』『国宝神護寺三像とは何か』『豊国祭礼図を読む』『江戸名所図屏風を読む』(角川選書)、『[増補]姿としぐさの中世史』(平凡社ライブラリー)、『謎解き洛中洛外図』(岩波新書)、『増補絵画史料で歴史を読む』(ちくま学芸文庫)など多数。日本中世史、絵画史料論・歴史図像学が専門。

目次

プロローグ 歴史のなかに舟木屏風を置く

1 舟木屏風の発見と美術史研究

2 紺暖簾と「吹上げ暖簾」―舟木屏風の表現技法

3 舟木屏風の視点・構図・描かれている事物―左隻と右隻

4 豊国定舞台の「烏帽子折」と桟敷―右隻の読解

5 猪熊事件・公家の放鷹禁止そして公家衆法度―左隻の読解

6 二条城へ向かう武家行列と五条橋上の乱舞―中心軸の読解

7 舟木屏風の注文主と岩佐又兵衛

エピローグ 京の町人と又兵衛が協作した舟木屏風