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<わたし>は「他者の他者」としてある。他者の思いの宛先としてここにいる
たとえば、生涯だれにも一度も呼びかけられなかったひとなどはいない。〈わたし〉は「他者の他者」として、他者の思いの宛先としてここにいる。〈わたし〉が他者の意識の宛先でなくなったとき、ひとは〈わたし〉を喪う。存在しなくなる。ひとの生も死も、まぎれもなく他者との関係の社会的な出来事としてある、そんな現代の〈いのち〉のあり方を、家族のかたちや老い、教育など、身近な視角からやさしく解き明かす哲学エッセイ。著訳者プロフィール
目次
生まれること、死なれること
「生まれる」ということ
「死なれる」という経験
死の語らい
1 寂しい時代
1‐1 「わたし」という浮草
底知れぬ「孤立貧」
わたしにできること、できないこと
「個性」という幻想
インターディペンデンス──「自立」の意味
ワン・オブ・ゼム
1‐2 私的なもののゆくえ──家族という場所
〈家族〉という関係
家族のかたち
家族以後の家族
住居と家族
私的なもののゆくえ
所有の現在形
所有のきしみ
1‐3 うつろいゆく成熟のイメージ──教育という装置
現代おとな考──もうひとつの大事なものを護るために
大人のなり方
成熟のやりなおし
信じられるひと?
教育論はだれへの問いか
教育の臨界点
教育という感情労働
1‐4 見えない死──医療という仕組み
見えない死、隠される生
〈生〉と〈死〉の変容──時代を映す脳死臓器移植
「生命倫理」とは?
「ある」と「いる」
1‐5 まとまらないこと──介護という関係
老いゆく時間のはざまで
「長生きしたくないね」
〈老い〉はほんとうに「問題」なのか
癒されたいという患い
聴く仕事
ケアという関係
ざらざらした感覚
2 死なないでいる理由
2‐1 〈いのち〉への問い
いのちを見とどける──「花」をめぐって
隠されるいのちの姿
〈わたし〉のいのち
いのちをつながりのなかで見る
2‐2 消えた幸福論
問いの性格──「なぜひとを殺してはいけないんですか」
死なないでいる理由
夢見る権利──〈不幸〉の声
幸福論の不在──思想史の文脈で
不可能な幸福論──〈人間性〉が受けたダメージ?
幸福主義の考え方
反幸福主義の考え方
幸福論の再浮上
ハッピーとラッキー
幸福をめぐる二つの声
2‐3 ほどける時間──小さな幸福
時のあわい
ぶらぶら乗り
シートに深く身を沈めて
月はおぼろ
からだで聴く
からだに救われる
いのちを預かる
人を歓ばせて歓ぶ
プライドの生まれる条件
あとがき
〈プロローグ〉 生まれること、死なれること