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この痛みは、誰にも言えないはずだった。
「私、雷に打たれたいんだよね」僕の隣で、千歳さんがそう呟いた。
いつも制服の下にハイネックのシャツを着ている風変わりなクラスメイト。
彼女に頼み込まれてこの夏、雷を“落とす”ための避雷針作りを手伝わされることに。何でもなかったはずの僕の日常が、彼女によって少しずつ彩られていく。
きっと、千歳さんは何かを隠している。
それでも千歳さんと一緒にいたくて、ずっとこんな日が続けばいいのにと思っていた。
彼女の“ひび割れ”にも気づけないまま……。
トゥーファイブクリエイターアワード《小説部門賞》受賞作。
ゆっくりと進む恋と痛み。少年と少女が“心”を見つけるひと夏の物語。
著訳者プロフィール
2013年、『やたらウロウロめったらドキドキ』で第四回京都アニメーション大賞小説部門奨励賞を受賞。
同年、第一回富士見ラノベ文芸賞大賞を受賞。受賞作を改題した『サンタクロースのお師匠さま』(富士見L文庫)でデビュー。
2021年、『ひび割れから漏れる』で第三回トゥーファイブクリエイターアワード小説部門賞を受賞。
登場人物たちの悩みや葛藤を瑞々しくも繊細な筆致で描く。