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己が鬼か。お前が鬼か。愛、絆、情――すなわち執着は、人を鬼と成す。
藩の剣術指南役を仰せつかる桐生家に生まれた桐生作之進には右腕がない。それは、作之進が幼いころに父親が斬り落としたものだった。元服の夜、作之進に父親自らがそう告白した。一方、現在に一人の男の子が生まれた。姉は初めての弟をかわいがり、不器用だけど真面目な父と、優しい母が暮らす、絵に描いたように幸福な家庭であったが、ある日、一歳になった弟の右腕を握りしめ、表情のない目で見降ろす父を見た。過去と現在、二つの物語が奇妙に交錯する。(「鬼縁」)――怪談専門誌『幽』の連載ほか、書き下ろしを含めた九篇を収録。著訳者プロフィール
目次
鬼想 八百人の子供の首を斬り落とさなければならぬ程。
鬼縁
鬼情
鬼慕
鬼景
鬼棲
鬼気
鬼神