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社会の即戦力となる人材の育成、本当にそれは大学の役割なのか。
文部科学省から国立大学へ要請された「文系学部・学科の縮小や廃止」は、文系軽視と大きな批判をよんだ。自ら考える力を養う場だった大学は、いつから職業訓練校化したのか。教養を身につけ、多様性を受け止める場だった教育の現場が新自由主義の波に晒されている。競争原理が持ち込まれ、その結果もあいまいなままにさらなる効率化が求められ、目に見える成果を求められている。そもそも教育の成果とはなんなのか。すぐに結果が見えるものなのか?
著者は、この問題が静かに、そして急速に進められつつあった当初から問題を指摘してきた現役の大学教授。「中の人」として声を上げたブログは、10万アクセスにも及んだ。著者が所属する学科は、今回の要請で一方的に「廃止」を宣言されている。1990年代に当時の政策で新たに創設された新設学科だったが、教員たちの尽力もあって、いまや受験生に人気の学科となっていた。にもかかわらず、一方的に廃止が告げられたのである。
その決定に率直に憤り、今や瀕死といっても過言ではない教育の現場を嘆きながらも、大学の存在意義を感じ、希望を見出そうとする著者。大学への希望を見出そうとする思いにあふれた渾身の書。
著訳者プロフィール
目次
突然の大騒ぎ この本を書くことになったわけ
◆第一章 国立大学改革プランの衝撃――文系学部はいらない?
極めて短期間に決定された<ミッション> 大学・日本学術会議の反発 事実とかけ離れた文科省の反論 ねらいうちされた教員養成系大学の新課程 片手間学科からの変貌 一貫性のない教育政策
◆第二章 大学改革はいかに進められてきたのか
さまざまな「大学」の誕生 一九九一年の大事件 少子化の中でなぜ大学数増加? 遠山プラン――大学の構造改革 競争原理は植えつけられたのか 大学のソビエト化 空疎な学長のリーダーシップ 文科省から突然降ってくるお金の正体
◆第三章 戦前の大学と戦後の大学
国家による大学統制 旧制大学とは何か? 新制大学の誕生、変わらない格差 研究者を養成する大学/職業教育をする大学/教養を身につける大学 「新課程」の廃止 福井県では文系学部が消滅? 経団連の文系擁護発言の真意
◆第四章 大学が崩壊する
『溶解する大学』 スキマとしての大学の崩壊 自然科学者がリードする大学改革 大学教員とはどんな人たちか? 緩やかな動物園から管理される場へ 博士の大量生産
◆第五章 大学をどうやって守っていくか?
カントの大学論――二つの知 教養部の解体と教養教育の衰退 教員たちは研究時間を奪われている タコ壺化は文系だけなのか 教員と学生とが共に創る共創空間としての大学 異質なものとの出会いで学生が変身 大学でしかやれないことをやりたい
◆終章 それでも大学は死なない
ポストモダンと<知>のステイタスの変容 国家をなぜ歌わせようとするのか? 世界の大学の変化 学生たちの気質の変化 大学は死なない
あとがき