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涙はなぜ汚くないか? <わたし>とはなにか? やさしい哲学エッセイ。
〈わたし〉がフルサイズで存在したためしがいちどでもあったろうか。行為の身体的プロセスを忘却し、自己意識からはずすことで成り立つ日常。そのなかの存在の揺らめきを映像・音楽・モード・身体・顔・テクスチュアなど、表面にあらわれるさまざまな事象に現象学的にアプローチし、身近な視角からやさしく解き明かす哲学エッセイ。臨床哲学につながる感覚論をベースとした、鷲田哲学の根幹をなすアフォリズムにあふれる一冊。著訳者プロフィール
目次
さくら
1 夢のもつれ
ラヴ・ミー・テンダー
nowhere man
月曜病
移動祝祭日
チューン・アウト
傘を忘れた!
意識の敷居
深い遊び
2 夢のひきつれ
リンパ腺
水中都市
カメレオン
縁切り祈願
クイーン
青二才
ひよこ
私に触れてはならぬ
不幸な意識
マスク
ぬけがら
魂と臓腑
3 夢のささくれ
人生観察家──パリでいちばん幸福なひと
鏡のそと
垂直のコスメティック
顔をなくした仏たち──奥丹波の破損仏
縮む顔・膨らむ顔
萬鐵五郎の自画像
傷つきやすさをめぐって──荒木経惟の〈顔〉
「わたしたち」とはだれか?
なみだの秘密──なみだはなぜ汚くないのか?
4 揺らめく像、散らばる音
割れ目の哀しみ──わたしの偏愛ビデオ
過剰であることのもどかしさ──侯孝賢監督『悲情城市』
フェティシズムよりももっと透明なフェティシズム──エリック・ロメール監督『クレールの膝』
哀悼と諧謔と──菊地信義の装幀
絶対体感──グレン・グールド氏の論理的な身体装置
〈存在〉の始源に共鳴する表現──アール・ブリュットの世界
いのちの遊戯、古老の舞──大野一雄「天道地道」
布と意味と運動と──ダンス・コスチュームをめぐって
モードの死──エア・ウェア展
ミック・ジャガーが大統領より年上になった日──ロックとエレクトリック・ボディ
わが愛しのロック・ギタリストたち──クラプトン、ベック、リチャーズ
あとがき