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山中独居10年間の日々。これは失意のわたしが森の中で甦った物語。
浅間山を遠くに望む、標高1000メートルの森の中に、夏仕様の古い別荘がある。周りには家も人影もない孤立した古家。大切な人たちが50代の若さで次々亡くなっていったショックと病を抱え、失意の底にあった著者は、ここを自分の柩にする覚悟で、60代半ばから10年間、古家に独り隠れ住んだ。友たちへレクイエムを送る静かな日々のはずだったが……、森には可笑しな事件がいっぱい起こるのだった!おびただしい数の猿が侵入してきたり、窓辺に置いたいちごがふと目を離したすきに消えていたり、影猫が現れて原稿を催促したり、やどりぎが大量に届いたり、そして大きい鳥の死。自然界のいのちと共にある喜びに満たされると、人々を恋しく思う気持ちが忽然と湧いてきたーー。80歳を超えた現在地から臨場感あふれるみずみずしい筆致で綴ったレジリエンスエッセイ。写真10点以上。撮影:白川青史。著訳者プロフィール
目次
森の中へ
古家との出合い
ビンボウ草を摘む子ども
影猫たちと翻訳小屋
*森の古家の変事
辛夷の花びら
魂が旅立つとき
イラクサと旧友と
木の実好みのねずみ
大自然のいのちと共に生きる ターシャとポター
*訪うもの
たんぽぽの花ワイン
冬ごもり
*雪野原
風の贈りもの
熊と画家の山栗
影猫ふたたび
桜花降りしきる
大きい鳥の死
エピローグ