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マツコデラックスが絶賛したポテトチップはいかにして生まれたのか?
本書は、60年にわたってポテトチップスを作り続ける小さなポテトチップスメーカー、菊水堂の創業者・岩井清吉の評伝だが、1930年に生を受け、15歳で終戦を経験し、19歳で上京して裸一貫から商売をスタートさせた清吉の商売のありよう、社会との関わりようを追うことは、戦後の日本社会を追うことにも等しい。ただ、それは単なる昭和懐古、ノスタルジーではない。
令和に生きる私たちは、あらゆる企業間競争において、「規模こそ正義」の洗礼を受けてきた。規模はスケールメリットを生み、物の値段を安くし、効率化を促進し、経済を発展させた。結果、小さな存在は小さな存在のままでは存続できなくなった。小は大に呑み込まれ、その大も、より大きな大に呑み込まれる。資本主義の行き着いた先だ。
しかし、小さな存在が小さな存在のまま存続する方法があるということを、岩井清吉は生涯をかけて証明した。圧倒的敗戦から経済大国に成り上がったものの、そこから再び脱落しつつある現在の日本で、清吉の生き様に視線を向けることには、何かしらの意味を見いだせるものと信じる。
地を這う蟻の目から見た、日本人の国民食たるポテトチップスの誕生譚。手触り感のある戦後大衆史。正史に綴られざる口伝の秘話。そして、ひとりの破天荒極まりない菓子職人の物語に、しばしお付き合いいただきたい。
(序章「蟻の目」より)
著訳者プロフィール
目次
第1章 馬山村
第2章 東京
第3章 チップ屋
第4章 巨人
第5章 ゲリラ
終章 一時