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美しくて怖ろしい。神聖にして邪悪。「蛇」をめぐる古今の民俗学誌。
人類と蛇との交渉の歴史は古くて深い。世界の諸民族には、蛇に関するいろいろな民俗が知られている。日本にも豊富にある。しかし、家畜や狩猟の対象になる動物とちがって、自然のままの蛇の利用はそれほど多様ではない。大部分は人類が文芸や宗教のなかにえがきあげてきた蛇である。そこにいるのは、「自然としての蛇」をとおして人間がさまざまな価値を与えた「文化としての蛇」である。時に嫌悪され、時に畏怖されてきた、絶対的な他者である蛇。そのような他者なる蛇が人間の文化にもたらしてきた豊饒な世界を民俗誌からひもとく、画期的な書。文庫化にあたって、新たな学説を解説として添えた決定版!著訳者プロフィール
目次
第1章 日常生活のなかの蛇――日本人のみた蛇
第2章 大王と大地の主の蛇――古代日本の蛇信仰からの流れ
第3章 天の蛇の虹の橋――日本の「虹の蛇」から世界諸民族へ
第4章 栗花落左衛門の蛇性――日本の水神としての蛇信仰
第5章 蛇をたたえる人々――日本の蛇飼育習俗からの展望
第6章 三枚の蛇の葉――日本の落語から古代ギリシアまで
第7章 蛇をつかう法術――日本の神判の伝統
第8章 蛇除け節供――日本の歳時習俗の形成
第9章 『白蛇伝』と蛇をめぐる民俗――中国
第10章 インド・東南アジアのナーガ
第11章 イブをだました蛇――西アジアからヨーロッパへ
第12章 畏敬と追放――ヨーロッパの蛇
参考文献
文庫版解説